紀平梨花にあってザギトワにはない「防衛的悲観主義」

NEWS ポストセブン によると。

 臨床心理士・経営心理コンサルタントの岡村美奈さんが、気になった著名人やトピックスをピックアップ。記者会見などでの表情や仕草から、その人物の深層心理を推察する「今週の顔」。今回は、フィギュアスケート・グランプリ(GP)ファイナルで初優勝した紀平梨花選手を分析。
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 グランプリファイナル制覇という快挙を達成して帰国したフィギュアスケートの紀平梨花選手。シニアデビュー1年目での初優勝は、浅田真央さん以来13年ぶりだという。
 見ているこちらは、紀平梨花という選手が彗星のごとく表舞台に現れたという印象なのだが、実はジュニア時代から平昌五輪の金メダリスト、ロシアのアリーナ・ザギトワ選手と競い合っていたというのだから、すでに実力者なのだ。
 そんな2人は今回の表彰式で、対照的な姿を見せた。記念撮影こそ並んで笑顔を見せていた2人。だがその後、表彰台に残り、カメラに笑顔を見せる紀平選手を背にしたザギトワ選手が、唇をきつく噛みしめている写真が報じられた。彼女の悔しさがストレートに表れている。
 GPシリーズで連勝していたザギトワ選手だが、ファイナルでは精彩に欠けた。五輪の時のような軽やかさや伸びやかさがない。技術的なことはわからないが、ジャンプの後の流れも悪く、どこか詰まった感じがしてしまう。反対に紀平選手は、ジャンプしてもしなやかに軽やかに伸びやかに、それでいてしっかりと氷の上を舞っていた。
 その結果、紀平選手はショートプログラムで今季世界最高得点を出した。試合後の会見で、紀平選手について聞かれたザギトワ選手はその瞬間、思わず唇を噛んでいた。負けん気の強さからだろう。そして着ていたジャージの襟元を直すように触ったのだ。人は、不安や不快、ストレスを感じると、自分の気持ちを落ち着かせ、なだめるために、無意識のうちに顔や手足を触ったりこすったりという仕草をしやすい。中でも首を触るのは、不快感やストレスが強い時だといわれる。それほど、紀平選手のショートプログラムの結果がショックだったのだろう。

 繰り返される質問には、「その質問には答えなくていいですか」と単調な話し方で回答を拒否。その後も唇を噛んだり、強張った表情のまま頬を指でこすったりと、うまく自分の気持ちや感情と折り合いがつけることができないようだった。
 そんなマイナスの思考や感情を引きずっていたかはわからない。だが、ザギトワ選手は、フリーの直前に足を痛めてしまったらしく、最初のジャンプに失敗する。ショートプログラムからの流れを見ると、まるでこれから起こる物事や行動を悪い方向に想像したことで、パフォーマンスも下がってしまったようにも思えるのだ。もしそうだとしたら、彼女のタイプは「方略的楽観主義」なのかもしれない。
 方略的楽観主義とは、堅苦しい用語だが簡単に言えば、過去の高いパフォーマンスと同じ動きができると期待して、ポジティブに考えること。こうした思考や認知をする人は、「自分はできる」「成功する」と楽観的でいることでモチベーションを保ち、高いパフォーマンスを出す。起こるかもしれない失敗や悪い結果は考えない方がいいのだ。
 それとは逆なのが、「防衛的悲観主義」である。これは、過去に似たような状況で良い成績が出せていても、様々な失敗を想定してネガティブに考え、これからの行動や場面に対する期待が低くなる。こういうタイプは、どういう場面でどんなミスをしそうか。ミスをしたらどうなるか、そのミスを挽回するにはどうしたらいいのか、そんな不安をモチベーションにして対策を考え、努力することで高いパフォーマンスを出す。
 紀平選手も、フリーの演技で最初のジャンプを回転不足で失敗。だが、その後のジャンプを次々と成功させ失敗を取り戻し、見事1位となった。瞬時に判断し、演技を修正していく能力の高さが評価されたが、帰国後のインタビューでは、ミスをした時にどう取り返すかを考え、準備していたと応えた。防衛的悲観主義の思考を用いて、試合に臨んでいたのかもしれない。
 これだけのエピソードで彼女たちのパフォーマンスや思考を決めつけることはできないが、楽観的か悲観的か、それによってモチベーションも結果も変わってくることは想像できる。
 演技が安定してきた理由を、「試合への気持ちのコントロールがついた」と話していた紀平選手。どちらか一方ではなく、2つのタイプの思考をうまく使って、さらに華麗な演技を見せてもらいたい。

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